一般に「登校拒否」といわれる長期欠席児童は、「登校不能」「不登校」といった方が正しい。学校へ行きたくても行けない長期欠席児童は年々増加の一途をたどっている。それに加えて青年層の情緒
障害、働き盛りの出社拒否、定年間近の仮面うつ病など、過剰なストレスや不安が引き起こす心の病気が大きな問題になっている。
ともあれ、子供にとって本来学校は楽しい場所であるはずである。
それは友達がいるからで、勉強することができるから楽しいという子はほとんどいないだろう。人間にとって、心を許せる友達がいない人生など考えられない。とくに、子供は目の前の喜びや目標が大
切で、大人のように五年、十年先の計画や目標を考えることはない毎日毎日、友達と面白おかしく遊べればそれで満足する。そういう楽しい学校へ行けなくなるというからには、相当大きな原因が潜ん
でいるはずである。登校拒否の子供を見てみると、親に対する反発
、教師に対する反発が最も多いフ」とが分かる¨反発される親や教師の態度に何か病気をつくる原因があるのではないか、と考えるの
が当然であろう。それは一体何か登校拒否は心の病気である。それを国に出せずに一人で悩み、体調を崩して楽しかるべき学校に登校したくてもできない。それが登校不能、不登校の正体である。
心の病気は一見したところ変わったところもなければ、体にも異常は認められない。そのために最初は病気とは信じてもらえないだろう。原因をつくるのが親や教師といった身近な存在だけに、なおつら
い病気である。一方、大人の世界でも「出社拒否」「就業拒否」が問題になっているが、こちらも「不出社」「不就業」の場合がほとんどである。仕事がいやで出社しないのではなく出社できないのである。
かろうじて会社には行けたとしても、会議に出席することができない、人前で意見を発表するのが怖い、営業の仕事なのに人と会うのが気が進まないといった悩みを抱えている。こうした出社拒否のサ
ラリーマンにしても、最初からこうだったわけではない。それどころ
か、この病気にかかる人のほとんどが五年、十年のキャリアを持つ有能な社員なのである。それに、もともといやな職種なら最初から
他の仕事を選んでいたはずである。こうした登校拒否、出社拒否
、就業拒否などはあたかも本人の怠けぐせのようにいわれ、本人に病気の原因があるというように誤解されてきた部分も多い。しかし、
これは心の病気で、ストレス社会では誰がかかってもおかしくない病気であり、また、周囲の一人一人が病気の原因をつくっているともいえるのである。いわれなき誤解を解き、登校拒否、出社拒否、
就業拒否は実は不登校、不出社、不就業であることをはっきりさせるために、この本を出版することにした。以前から私は心の病気や自律神経失調症の病気について何冊かの本を出版してきた。
そうした患者さんを持つ親御さん、兄弟の方から、今度本書の実例集に掲載したケースが病気に当たるかどうかの相談を多数受けた
。心の病気や自律神経失調症という題名では分かりにくい部分も
多いので、本書では具体的な題名で、個々のケースを見ながら解説することにした。本来なら「不登校」甲省聟と「不就業」としたい病気なのだが、通常使われている登「校拒否」「出社拒否」「就業拒否
」という分かりやすい言葉を使ったのは、悩んでいる人たちの目に触れやすくしたいからである。ひいてはこの病気を正しく理解し、患者さんの周囲の人たちの理解を得たいと思ったからである。
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